
プロフィール
馬種名 | 御崎馬 |
ふるさと | 宮崎県串間市(都井岬) |
体高 | 約130cm |
体重 | 200~300kg |
飼育頭数 | 92頭(2023年,保存団体報告値) |
保護指定 | 国指定天然記念物(1953年) |
毛色 | 鹿毛、黒鹿毛が多い。 同じ鹿毛でも、明るめのものや 赤っぽいものもいる。 薄墨毛、青毛も。 鰻線がハッキリしたものが多い。 |
歴史と課題、そしてこれから
これまでのあゆみ
江戸時代初期に軍馬を得るため、高鍋藩が現在の宮崎県串間市・都井岬の辺りに藩営牧場「御崎牧」を設置しました。
比較的小さな馬は農家に払い下げられ、農作業や荷物の運搬に活躍していました。
その役割を終えた馬たちは、周年放牧・自然繁殖の環境下で半野生状態となり、現在に至ります。
1953年に馬としては唯一「岬馬およびその繁殖地」として国の天然記念物に指定されています。
「野生」ではなくあくまでも「半野生」と呼ぶのは、人の手によってきちんと個体識別や健康管理されているからです。
かつて「駒追い」と呼ばれた、若い馬を捕獲して搬出するために馬を集める作業がありました。
現在は「馬追い」として寄生虫駆除、健康診断、検疫と遺伝子解析のための採血、個体識別のための烙印作業などの保護管理を目的に行われています。
2011年に馬伝染性貧血症の陽性馬が確認され12頭が亡くなって以降は、特に重要な作業と位置付けられるようになりました。
今後も半野生状態を保つためには、このような医療的介入だけでなく、新たな草地を作って手入れするなどの環境的なバックアップも必要だと考えられています。
現在の取り組みと課題
保護活動によって一時期より頭数は回復しましたが、実際に増えたのはオス馬に偏っていたため、今後はオス馬とメス馬の数のバランスについても議論していく必要があるようです。
観光客の餌付けによって悪い意味で人間に馴れてしまうという問題もあります。
人と馬の接触事故や車と馬の交通事故、ゴミによる馬のケガが発生することもあり、保存団体としては「観光客には、つかず離れずの程よい距離感を保ってほしい。」とお願いしています。
馬と人の安全のため、御崎馬に近寄ったり触れたりすることは禁止となっています。
また、ペットを含む動植物の持ち込みもできません。
近年、ワンちゃん連れの方にスタッフさんからお声がけしたところ、逆上されてトラブルになったケースもあるそうです。
御崎馬にはダニがいっぱいついているそうなので、そういう意味でも必要以上に近寄らない方がいいですよ!とガイドツアーのスタッフさんがおっしゃっていました。
御崎馬は半野生のため、繁殖も採餌も、その生死も基本的には自然任せ。
その年に生まれた子馬のうち、大人になれるのは約半数という厳しい世界です。
安易に手を貸すと人の助けがなければ生きられない馬たちになり御崎馬らしさが失われるため、たとえ親からはぐれた子馬がいたとしても、人間が不用意に手助けすることはできません。
その条件下で御崎馬を守るため、最低限であり最大限人間ができることとして、メス馬の妊娠が終わってオス馬が落ち着き事故リスクが下がる秋頃に「馬追い」が行われているのです。
「馬追い」の作業は、広い都井岬で1ヶ所に馬を集めて採血や駆虫薬の投与を行うという、なかなかの体力勝負。
なんといっても、担い手の高齢化が最大の課題です。
それをなんとか解決するため、現在は地元の宮崎大学や岡山理科大学の実習として学生たちに参加してもらっています。
また広く一般市民に向けて「馬追い体験ボランティア」の募集もあります。
時期になると串間市役所のWEBサイトなどで案内がありますので、ぜひチェックしてみてくださいね。
御崎馬に会いに行く醍醐味はなんといっても野生に近い状態の馬の生態を観察できることです。
多くは春夏に山側の草地でオス馬+複数のメス馬+仔馬から成る「ハレム」という群れを作り、秋冬は小さな群れに分かれて海寄りの林に移動して過ごします。
馬たちは広い岬の中を自由に行動しているためタイミングさえ合えばフラッと行っても出会えますが、逆を言えば全く出会えない可能性もあるということ。
ガイドツアーを実施している団体がありますので、より御崎馬のことを知るためにも事前の問い合わせをお勧めします。
これから期待される役割
知識として「馬は群れで生きる動物」とわかっていても、馬とふれあう機会の少ない日本では、それを実感する機会はそうそう無いのではないかと思います。
御崎馬を観察することで、改めて「馬は群れで生きる動物」なのだと感じられることでしょう。
地域固有の自然環境や歴史文化を観光客に伝えることにより、その大切さが理解され、保全につながっていくことを目指す仕組みとして「エコツーリズム」が注目されていますが、御崎馬はまさにその役割を担う存在といえます。
「つかず離れず」自然との距離の取り方を学ぶ絶好の機会にもなると思いますので、自由研究のテーマにもなりますし、お子様連れでガイドツアーに参加されるのもオススメです。
保存団体情報
都井岬馬保護対策協力会
※公式サイトがないため、宮崎県教育研修センターみやざきひむか学ネット『御崎馬を守る人々』牧組合の方のお話(小田原さん)にリンクしています。
〒888-0221 宮崎県串間市大字大納42-7
都井御崎牧組合事務局内
TEL:0987-76-1244 FAX:0987-76-1244